本日はフィリピンのセブ島でコンポストの事業(BIO NUTRIENT WASTE
MANAGEMENT Inc.)を行っているクリスさんとエマさんにインタビューを行いました。クリスさんとエマさんにつなげていただいた櫻井絹恵さんも同行してくれました。
まず初めに施設の敷地内にあるコンポストトイレについてエマさんに教えていただきました。ここのトイレはとてもきれいにされていました。男性用と女性用トイレで分かれていましたが、どちらも「し尿分離型」トイレ、つまり、尿と便を分けて回収するトイレであり、尿は薄めて液肥に、便は堆肥に利用します。便は用を足すとそのまま下にたまっていくようになっていました。便を堆肥化する際には水分量の調整が必須なのですが、コンポストに水分が入らないように、用をたすところとおしりを洗うところとで便器を分ける工夫がなされていました。(ちょっと面倒な気もしますが)水洗トイレではないので、水をかけて流す代わりに、堆肥をスコップですくって便の上にまぶします。この便をためコンポスト化するタンクは一つで100L入り、いっぱいになったら別のタンクに取り替えます。尿のほうは1日で一杯になるので毎日取り換えているそうです。下の写真は白のタンクが尿、青のタンクが便をコンポスト化しているタンクです。
生ごみの山はまず一番右の貯蔵場(BAY1)に作られます。コンポスト化しやすいように細かくなった生ごみを層になるように山積みにしていき、その上にコンポストの活性化剤(高倉式コンポストを参考にしています)をまぶし、またさらに次のゴミの層を作り、活性化剤をまぶし…という工程で山を作ります。この生ごみの山を置く載積場は全部で10棟(BAY1~10)あり、それらのスペースは隣接して配置されています。一週間かけて山ができたらその山はひとつ左のスペースに移され、空いたスペース(BAY1)にまた新しい山が作られていきます。これらの山は一週間経つと一つ左のスペースに順々に移動していき、十週間が経過するとようやくコンポスト化が完了します。できたコンポストは製品化する前にふるいにかけ、コンポスト化が不十分な大きいものを取り除きます。できたコンポストは体積も重さも最初の20%になります。このコンポストは一袋25kgの袋に詰められ、1キロ10ペソ(約25円)、つまり、一袋250ペソで販売されます。大きい農家など大量に購入する人にはその量に応じて1キロ5~10ペソで販売しています。
ゴミの分別や細断、コンポスト化のための載積などで雇われている人たちはグループ(1グループ10~15人)を組織しています。ここでは全部で3グループ、つまり40~45人を雇っているのですが、グループ内のメンバーはグループで選別しています。その理由は、ここでの給与形態にあります。以前は1日300ペソで1人ずつ雇っていたそうですが、そのシステムを止め、グループごとで1台のトラックに運ばれてくるゴミを請け負います。業者は1トンで700ペソを受け取るのですが、作業するグループは1トン350ペソで請け負います。つまり、グループでゴミ取集トラックのゴミを引き受け、そのゴミが10トンあった場合、そのゴミの作業が終われば、全員で3500ペソを山分けするという形です。上の表はグループごとにどれだけのゴミを扱ったかを記しています。(トータルの量と合計値が合いませんが…)訪れた日は月曜日で、月曜日の欄を見るとどのくらいゴミを処理しているか分かります。火曜日以降の欄は先週の数字だそうです。
この業者以外で働いている人たち(主にゴミを漁っている人)は一日80ペソ~200ペソの収入しか得られませんが、ここではゴミを処理する量に応じてグループごとで得られる給料が変動します。一番収入の多い人では一週間で約4,200ペソ(約10,500円)を稼いだそうです。一般的にフィリピンのセブ島では月収10,000ペソ(約25,000円)なので、この場所の給料はとても良い方です。しかし、グループの働きによって給料は変わるため、労働者は励んで働きます。そのため雇用されている人がグループを作るときはよく働くメンバーしか入れません。排他的ですが、効率がよくなり、雇用者と被雇用者ともによい結果になります。Win-Winの関係になっています。また、ここに働く人は2013年にフィリピンを襲った大型台風ハイエンの被災者だそうで、家や住む場所を失った人々だそうです。
請負の1トン700ペソのうち、350ペソは人件費に使われると書きましたが、残りの350ペソは機械のメンテナンス費や運営費で使われるそうです。自分たちの給料はコンポストの売り上げで決めるとおっしゃっていました。
この事業は二年前の2012年に初期投資500万ペソ(約1250万円)で始まり、今年の5月から市からのゴミの請負が始まり、7月21日に一番初めのコンポストを製造したそうです。現在のところは順調に製造できているそうです。コンポストの売り手は家畜の飼料を生産するために大型農場を経営しているDoleやフィリピンのビール会社のSan Miguelを見込んでいるそうです。(訪問した当日に50袋の契約がありました。本当に始まったばかりだなーと思う光景でした。)この施設の周辺でコンポスト事業をしているところは他にはないとおっしゃっていました。
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