2014年9月19日金曜日

セブの海沿いのスラム

9月17日の活動の続きです。

イナヤワンのゴミ山に行った後は、マザーテレサ孤児院に行き、2~5歳までの子供たちのボランティアをしに行きました。小さい子供をあやすのはとても大変で、全員で13,4人いる子供の子育てというのは本当に大変であると感じました。子育てをまだしたことがない自分たちでしたが、たった1日でその大変さを重々理解しました。


その後、その孤児院があった地区で2件インタビューしに行きました。ここもスラムで、不法に居住している人たちが生活していたのですが、テレビゲームからお店から、パソコンに至るまで、思っていたよりもものに充実している様子がうかがえました。



一人目はElly Moneraさんです。(写真はMonera一家、Ellyさんはお母さんです)


Ellyさん1人の子供を持つ3人家族です。夫は漁師をしていますが、収入が安定しないため、Ellyさんは家でカフェのようなものを営んでいます。この一家の収入は一日に200~250ペソ、月で60007000ペソです。一日の収入のほとんどは食費でなくなってしまいますが、その他にも電気代を月に200ペソ、水代を月に300ペソ払わないとならないので、地主に借金をしてそれを利子つきで返すといった具合で日々やりくりしているようです。利子のつき方は、例えば500ペソを借りたら2か月で徐々に返し、合計600ペソで返す、といった具合です。

一番左がEllyさん、真ん中は息子、右は同行してくれたRohnaさん

右に少し見える階段で2階に行けます

トイレに関しては、自宅にないため、トイレを持っている近所の家に行って一回3ペソで使わせてもらっているそうです。一日に一人だいたい二回くらいトイレを使うとして、Monera一家はトイレだけで月に540ペソを支払っていることになります。この額は電気代の二倍以上もかかっているため、すごい負担になっているのではないかと思われます。そのトイレを実際に見させてもらいましたが、匂いもなく、年季は入っていますがきれいに使われていました。隣に同じトイレもありました。



Ellyさんはこの土地にもう13年も住んでいるそうです。フィリピンでは通常、他人の土地でもそこに二年間以上住んでいるとその人の土地になるのですが、Ellyさんの住む土地は政府のものなので、二年間以上住んでも私有地にはならないばかりか、政府がこの土地の開発を始めたらこの土地に住んでいる人は他の土地に移動しなければなりません。他の住む場所をまだ見つけられていないため、もし今この土地を追われてしまうと住む場所を失うことになってしまいます。(ただ、もう13年も住んでいて何もないので、大丈夫だとは言っていました)

続いて、雨季特有の問題について尋ねたところ、二階にいれば安全だという答えが返ってきました。この周辺の家は皆二階建てだそうで、洪水などがあった時は二階に避難するそうです。そのため寝室も二階にあります。写真の通り海がとても近いので、洪水になることも多いのでしょう。


家の中のキッチンが目に留まったのですが、ここではガスは使っておらず、炭や薪を燃やして調理しているようでした。ですが、これは家の中なので煙が充満することが考えられます。



この地域では外で調理している様子も見られました。一斗缶の下の一部をくりぬいてあり、そこに燃やすものを入れる形でした。(ロケットストーブなどを提供すれば喜ばれるかもしれない…)


一人息子は大学をすでに卒業し、警察官になる準備をしているそうです。警察官になるにはライセンスが必要でその試験の勉強をしているのですが、それをクリアすると将来、自分のお金で家が建てられるほどになるそうです。こうして努力してこのスラムから脱却していくのかと感じました。




二人目はMeralona Cejasさんです。


Meralonaさんは13歳と15歳の二人の娘を持つ4人家族で、娘二人はそれぞれ中学校と高校に通っています。夫は大工をやっていますがいつも職につけるとは限りません。またほとんどの場合が日雇いなので収入は不安定です。Meralonaさんは今年の7月にサリサリストアを始めました。サリサリストアーとはカウンター越しに商品を受け渡しする小さなお店のことで、スナック菓子やバナナなどを売っていました。


Meralonaさんの収入は一日150300ペソで、主な支出は家のローンです。開店資金として5000ペソを借りて購入したものなので、利子つきで計6000ペソを返さなければなりません。一日100ペソずつを二か月間払い続けて返済するそうなので、それだけでも収入の半分くらいはなくなってしまいます。(1日200ペソ売り上げがあると100ペソは支払い、もう100ペソが収入になります)

その他の支出は電気代が月に300500ペソ、飲料水代が約二日分で20ペソ、洗濯等に使う水(雨がバケツ1杯分(10Lぐらい)で2ペソだそうです。(洗濯に使う水すら買います)

ちなみにこの地域には公共の水道管を引いている家庭もありました。そうした家庭は水をMeralonaさんのような、自分の家に水道管がない家庭に水を売ったりするのですが、水道管を引く工事だけでも10000ペソするそうです。

これだけの支出がありますと、食費にかけられるお金が多くても四人で一日200ペソ弱になってしまい、小さいカップ麺一つで約34ペソのフィリピンではとても厳しいことが分かります。


Meralonaさんの家には二階がないそうです。その理由を尋ねると、2004年に火事に遭ったためなくなってしまったとおっしゃっていました。新しく家を建て直す時になって、夫が胃の手術受けたため二階を建て直すお金もなく、そのまま二階なしで生活しているそうです。1階だけの空間はとても狭く、ここに4人生活しているのかと思うと大変な生活であることが容易に想像できました。

雨季特有の問題について尋ねると、2013年にフィリピンを襲った大型台風ハイエンの話をしてくださいました。ハイエンが来たとき、水が腰の高さまできていたそうです



この店の机の縁あたりまで来ていたと言っていました。その際は同じ地域の住民が全員近くのバランガイホールに避難したそうです。排水溝もあるのですが海に直接つながっているため全く機能していなかったみたいです。



今回の渡航でこれだけスラムにインタビューできたのは予想外でしたが、さまざまな状況が把握できとてもよかったと思っています。ただ、「スラムは危険だ」といろんな人に忠告されていた、その意味がはっきりと理解できる光景がありました。


さっきお見せした堤防沿いのスラムを皆でぶらぶら歩いていたら、急にこんな立派な豪邸が現れたのです。

初めは、ここが政府の土地であるので政府関係者の邸宅であると思っていたのですが、Rohnaがこっそり教えてくれました。「これはドラッグを売りさばいている人の豪邸だよ」と。

実際にドラッグが売られている光景は今回見なかったのですが(いや、見ていたらやばい状況)、ドラッグらしき白いものを細い袋に詰めているおばあさんをちらっと見かけたことはあります。その親玉はこんな感じの豪邸を建てます。(おそらく政府の人ともつながりがあるのでしょう。でなければここにこんな家は建てないはずです…)

どこの国にもスラムはマフィアが住み着いていて、ドラッグの売買で生計を立てている人たちもいるという話を聞いたことがあったのですが、こんな形で目の当たりにしてしまうとは思ってもみませんでした。しかし、違う側面でものごとを考えると、こうしたお金を持っている人が近くにいることによって成り立っている生活(お金を借りるなど)もあるのだと思い知らされます。余計に状況が複雑になります。物事を両方の側面で見ると一概に「あれは悪い人たちだ」と言えないのが分かってきます。

スラムは面白くも答えがない難しい世界です。




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